研究概要 |
1.正常T細胞におけるCDK阻害因子 マイト-ジェン刺激によるヒトT細胞の増殖において、cdk2の活性化と同時にcyclinEの発現が早期に観察されたが,p21およびp27のCDK阻害因子は蛋白としては有意に発現していなかった.このことは,正常の増殖反応においては,これらのCDK阻害因子がG1期の通過を直接制御しているとは考えられないこと,また正常細胞に比較して腫瘍細胞でG1期の通過時間が短いことの説明がCDK阻害因子では説明できないと考えられた. 2.腫瘍細胞におけるcyclinEの脱制御 Raji細胞を含めた腫瘍細胞においては,ほとんどの例でcyclinEの高値で観察される.また,Raji細胞をDMSOで処理して増殖を停止させた場合でも,このcyclinE高値は解除されない.ただし,cdk2の活性は増殖の停止により低下し,増殖の再開により増加するため,cyclinE以外の制御を受けていた. 3.増殖停止細胞でのNADの蓄積 DMSOで増殖を停止させたRaji細胞ではNADの著明な蓄積が認められた.NADはCDK阻害因子がp53に関連して促進するDNA修復で最も重要なpoly-ADP-ribosylaseの基質である.このため,この状態では,DNA修復が障害されていることが予想されたが,紫外線照射による影響を検討したが,DNA修復には障害はなく,poly ADP-ribosylationの低下も観測されなかった.
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