研究概要 |
平成7年度は、ホメオボックス(HOX)遺伝子と造血細胞の分化、白血化の機序を明かにし、アンチセンス核酸による白血病治療の可能性を探るために実験を行い以下の結果を得た。 1.赤芽球系に特異的とされていたHOXB遺伝子のうち、骨髄性白血病細胞株(NKM-2,NB4,HL60,NOMO-1)においてHOX B6,HOXB9 mRNAの発現がNorthern blottingおよびRT-PCR法により明かにされた。 2.HOX B6 mRNAの発現は骨髄性白血病細胞株(NKM-1,NB4,HL60)において、レチノイン酸による骨髄球系の分化で増加し、TPAによる単球系の分化で減少する事が明かにされた。 3.HOX B9 mRNAの発現についても各分化過程においてHOX B6と同様の変化をする事が明らかになりHOX遺伝子発現が3'-5'方向のカスケードモデルに従うことが示された。 4.HOX B6に対するアンチセンス核酸はNB4,NKM-1に対し増殖の抑制を行ったが、形態的な変化は認められず分化誘導は認められなかった。 現在では分化を制御する遺伝子は単一よりむしろいくつかの細胞系列にわたって存在する複数の転写因子が協調的に作用することにより、細胞系列に特異的な、そして各分化段階に特異的な遺伝子発現が規定されているととする仮説が有力である。以上よりHOX B6は骨髄球系の分化に密接に関与する転写因子の一つであると考えられる。 平成7年度は多数あるHOX遺伝子群のうちHOX B6が骨髄球系細胞の分化増殖に関与していることが明らかにできた。さらにHOX B6に対するアンチセンス核酸がその増殖を抑制することが明かになり臨床応用への道が開けた。
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