研究概要 |
GN-CSF依存性ヒト白血病細胞株MB-02のIL-3による好酸球系への分化を詳細に解析するため、IL-レセプターa遺伝子をレトロウイルススペクターにて同細胞株に導入し、安定亜株MB-02-3Rを作成した。この細胞株は高濃度のIL-3により増殖するが、高度の分化を誘導する低濃度のIL-3では一部の細胞にアポトーシスが出現していた。従ってIL-3の濃度勾配によって分化の割合を再現性よくコントロールできるシステムといえる。分化誘導後May-GIemsa染色にて特徴的な顆粒が観察された。この顆粒は好酸球系のマーカーであるeosinophil major basic protein(MBP)であることが免疫染色で確認できた。そこで転写開始部位の5´側の250baseほどのMBP promoterをprobeとして好酸球系分化に特異的な核タンパクの同定、検出を試みた。低濃度のIL-3で刺激した細胞の核タンパクを用いてgel-shift assayを行い、分化誘導時に出現するユニークなバンドの存在を検討した。諸家の報告を参考にするとGATA1,GATA2,GATA3,NF-E2,及びPU-1などが候補として予測され、それらを念頭において検討したが、現在まで決定的といえるものはない。現在は定量的変化をも考慮し、候補を絞ってCAAT-boxに結合するC/EBP5に着目し、DNAカラムによる同タンパクの抽出と分化誘導時のmRNAレベルの発現の変化につき、実験を続行している。一方、好酸球系への分化特異的転写調節領域自体も文献上でも完全にはまだ決定されていないため、HL60細胞の分化モデルの報告にもとづき、5´側のMBP promoter領域をふくめたDNA断片の1.5-2Kbを調整し、それから各種の長さの断片を調整し、ルシフェラーゼ遺伝子につないでMB-02-3Rにtransient transfectionした。各濃度のIL-3刺激下でのルシフェラーゼ活性にもとずき、IL-3によるMBP遺伝子発現領域を決定すべく現在も実験を続行中である。
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