われわれは、血小板輸血不応例の検討からCD36欠損者の存在を初めて示すと共に、その遺伝子異常を明らかにしてきた。CD36は近年、新しい酸化LDL受容体の一つとして注目されているため、本研究では上記のようなわれわれの研究成果に基づき、CD36欠損細胞を用いることによりCD36の酸化LDL受容体機能をより詳細に解析することを目的とした。本研究においては2例のCD36Type1欠損者を対象とした。まず、これら2例の遺伝子異常を解析すると2例ともCD36の翻訳領域に2塩基欠失を有するalleleと1塩基挿入を有するalleleのcompound heterozygoteであった。どちらの異常でも早期にストップコドンが出現し、さらにそのmRAN量も減少していることが明らかとなった。これらCD36TypeI欠損者のマクロファージを用いて酸化LDLの結果実験を行うと、CD36陽性マクロファージに比べて酸化LDLの親和性はほぼ同程度であったが、その結合量は約40%減少していた。さらにCD36欠損マクロファージを酸化LDL存在下24時間培養し細胞内のエステル化コレステロール量を測定すると、CD36陽性マクロファージでは約2倍にまで増加したが、CD36欠損では1.2倍の増加に留まった。以上のように、本研究で得られた知見よりCD36が酸化LDL受容体の約40%の機能を担っており細胞の泡沫化に重要な役割を果たすことが初めて明らかになった。CD36欠損が動脈硬化に抑制的に作用するか否かは、今後の大きな課題であると考えられる。
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