研究概要 |
骨髄腫細胞は正常の形質細胞と異なり細胞表面抗原CD19を発現していない。このCD19発現の消失が形質細胞の発癌機構となんらかの関連があるものと考えられる。CD19遺伝子の発現機構をその転写因子Pax-5遺伝子の発現調節の面から検討した。高γグロブリン血症および骨髄腫患者の骨髄穿刺液からそれぞれ正常形質細胞と骨髄腫細胞を、既報のごとくセル・ソーターで分取し、RNAを注出しRT-PCR法でCD19,Pax-5,E2AおよびId遺伝子mRNAの発現を調べた。その結果、正常形質細胞ではこれらすべてのmRNA発現を認めたが、骨髄腫細胞ではCD19とPax-5mRNAの発現は認められなかった。つまり、骨髄腫細胞における表面抗原CD19の発現の消失は、CD19mRNA発現の消失さらにPax-5mRNA発現の消失によることが示された。更に、Pax-5遺伝子にコードされているBSAP活性をゲル・シフト法で調べると、骨髄腫細胞および骨髄腫細胞株にはBSAP活性は検出されなかった。これらの研究成果により、骨髄腫細胞におけるCD19遺伝子の発現消失はその転写調節因子Pax-5遺伝子の発現の消失によることが明らかになった。現在、Pax-5遺伝子の転写調節機構を明らかにするべく、Pax-5遺伝子5′側上流のDNA断片をクローニングし塩基配列を決定しつつある。
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