研究概要 |
骨髄腫細胞は正常の形質細胞と異なり細胞表面抗原CD19を発現していない。このCD19発現の消失はその転写因子Pax-5遺伝子の発現消失によることが前年の研究より明らかとなったので、本年度は、Pax-5遺伝子の転写調節機構を明らかにすべく、ヒトPax-5遺伝子5′側上流のDNA断片をPCRによるgene walking法にてクローニングし塩基配列を決定した。クローン化した全長1,050 bp DNAの塩基配列から予想される転写因子の結合部位にはLyf-1(Ik-1), Ikaros-2(Ik-2), bHLH, E-47, Sox-5等の結合部位が認められた。また、クローン化した全長1,050 bp DNA断片は陽性コントロールと同等のpromoter活性を示した。820 bpの欠失mutant (Δ-820)で全長のDNA断片と同等のpromoter活性を示した。また、70bp欠失mutant(Δ-70)では、ほとんどpromoter活性がなかった。従って、promoter活性として5′上流70 bpから820 bpの領域が必要であると考えられた。この領域の中にE2A (E-47), Sox-5, Ikaros, bHLH等の結合部位が認められたことは、すでに報告されているE2A, Sox-4,あるいはIkarosのknockoutマウスでのPax-5遺伝子発現の欠失と符合した。Pax-5遺伝子を発現しているB細胞株Rajiから核抽出物を得、クローン化した1,050 bp DNAからのDNA断片(probeA, BあるいはC)をtemplateにしてgel shift assayを行った。probeAではOct-1, GATA-1, Sox-5、 probeBではIk-2, GATA-2, GATA-3, E47の、さらにprobeCではLyf-1, Ik-2, bHLHの結合部位があり、各probeに特異的に結合する因子活性を認めた。本年度はPax-5遺伝子の5′上流の転写調節領域のDNA塩基配列を明らかにし、その予想される結合因子部位を明らかにした。promoter活性として、少なくとも5′上流-70から-820bp領域が同定された。
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