研究概要 |
BCL-2遺伝子は,Programmed Cell Death(Apoptosis)を抑制する機能を有し、細胞の増殖や癌化において重要な役割を演じている事が知られている。我々はt(14;18)転座を有する悪性リンパ腫患者より新しく樹立されたBCL-2産物高発現リンパ系腫瘍細胞株(OZ)を用いて平成7年度に1)本細胞株ではセリン残基にリン酸化をうけたBCL-2蛋白を高発現している,2)抗腫瘍剤によるApoptosis誘導抵抗性を示すが,この抵抗性はPKC阻害剤によりセリン残基のリン酸化を抑制することにより失われる,3)逆にPKC活性を促進するTPAはApoptosis誘導を抑制する。さらにOZ細胞では、4)γ-インターフェロンによりFas抗原を誘導できるが,抗Fas抗体単独処理ではApoptosisを誘導できず、BCL-2アンチセンスオリゴを前処置することによりApoptosis誘導が可能となることを明らかにした。さらに、平成8年度には、治療関連性急性骨髄性白血病患者より新しく樹立されたGM-CSF依存性に増殖する骨髄系腫瘍細胞株(OHN)についてもBCL-2と細胞周期制御遺伝子のApoptosisに及ぼす影響について検討した。本細胞株ではRb遺伝子の欠失、p53遺伝子の変異が認められたが、Bcl-2遺伝子は正常に発現していた。OHN細胞はGM-CSF添加により増殖が促進されると同時に細胞表面のFas抗原の発現が増加し、抗Fas抗体によるApoptosis感受性が増加した。このことは治療関連性骨髄異形性症候群や急性骨髄性白血病の病態を考える上で興味深い。
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