成人T細胞白血病(ATL)細胞における、CD95/Fas抗原を介したapoptosisの機序について、oxidantの関与を中心に研究を行った。ATL患者末梢血から樹立された株化ATL細胞は、IgM抗Fas抗体によって容易にapoptosis引き起こす細胞と、高度耐性の細胞に分けられた。また、感受性の細胞を微量の抗Fas抗体存在下から培養することにより、高度耐性のsubcloneを得ることが出来た。 抗Fas抗体処理によって、感受性細胞からはoxidantの発生が認められたが、耐性細胞からは認められなかった。oxidantによるDNA損傷のマーカーとなる8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)の量と、発生したoxidantの量は正の相関を示した。anti-oxidantとしての細胞内還元型glutathione(GSH)およびその合成酵素であるγ-glutamy1 cysteine synthetase(γ-GCS)は、耐性細胞の方が感受性細胞よりも数倍増加していた。興味深いことに、抗Fas抗体に耐性な細胞はさまざまな抗癌剤に対しても交差耐性を示した。また、ATL患者尿中の8-OHdGは、化学療法によって著しく増加することから、抗癌剤による殺細胞効果にもoxidantが利用されている可能性が強く示唆された。 しかし感受性細胞の抗Fas抗体や抗癌剤によるapoptosisは、in vitroにおいて大量のGSHを添加しても完全には抑制できないことから、耐性化にはanti-oxidantの他の因子の関与も示唆された。抗Fas抗体に耐性の患者末梢血ATL細胞のFas遺伝子を解析することにより、一部の症例ではFas遺伝子のdeath domainに異常が起きていることを発見した。
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