研究概要 |
(1)Rh抗原系のエピトープを解析する目的で、種々のRh cDNAを挿入したMFGベクターを用いて赤芽球系白血病細胞株KU812Eに遺伝子導入を行った。KU812E細胞に発現したリコンビナントCEポリペプチドは、遺伝子解析から予想されたアミノ酸置換部位がCcEeの抗原性発現に重要な意義を有することを示した。さらに、RhD cDNAとRhCE cDNA間でキメラ分子を作製し、上記アミノ酸置換部を含まない細胞外ループ(6番目)のRh抗原活性に与える影響を検討した結果、E抗原活性の消失、D抗原活性の著名な減弱を誘導することが判明した。以上の結果より、各Rh抗原における抗原性の発現には多型性を示すアミノ酸置換のみならず、ポリペプチド鎖全体のコンフォーメーションも必要不可欠と考えられた。 (2)Rh抗原が赤血球膜に発現するためには、Rhポリペプチドに加え何らかのco-moleculeが必要と考えられきた。これらのco-moleculeについて、より詳細に検討するため、RhD陽性例とRhD陰性例の遺伝子比較、Rhnull,-D-などのRh変異型における遺伝子解析を行った。その結果、正常なRhD遺伝子を保有するRhD陰性例、正常なRhCE遺伝子の存在する-D-例が見出され、、これらに注目すると、RhD,RhCE抗原の各々に特異的なco-moleculeの存在が強く示唆された。一方、Rhnullおいて、Rh50 cDNAにsplicing異常による122bpの欠失とそれに伴うフレームシフトが見出され、Rh50糖蛋白の大きな構造変化が予想された。そして、この異常なRh50糖蛋白は、Rh抗原を担うRhcE、RhDポリペプチドと安定したコンプレックスを形成することができないため、全てのRh抗原が欠失したと考えられた。
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