RhならびにDuffy mRNAのスプライシング・マップを完成するとともに、赤血球分化の初期、あるいは後期に出現するアイソフォームを見出した。また、種々のRh cDNAを挿入したMFGベクターによる遺伝子導入実験や各種Rh変異型の遺伝子解析を行い、Rh抗原の赤血球膜への発現機構について検討した。その結果、各Rh抗原の抗原性は、多型性を示すアミノ酸置換とポリペプチド鎖のコンフォーメーションとの相互作用により形成されていることが判明した。さらに、Rh抗原の赤血球膜への発現に際しては、Rh50糖蛋白質をはじめ複数のco-moleculeとコンプレックスを形成することが必要不可欠と考えられた。 Rh、Duffyシステムの遺伝子解析にも取り組んだ。Rhシステムについては、RhD遺伝子のエキソン-イントロン構成、プロモーター構造を明らかにするとともに、RhD、RhCE遺伝子の位置的関係と両遺伝子間のスペーサー領域の構造を決定した。Duffyシステムについては、新たなmRNAを同定したが、このmRNAがDuffy遺伝子の主な転写産物であることをつきとめるとともに、赤芽球系細胞と血管内皮細胞における各々の転写開始部位も決定した。なお、赤芽球系細胞の転写開始部位の約40塩基上流にはGATA配列があり、Duffy陰性者ではこのGATA配列にミューティションが生じていることも明らかにした。 今回の研究を通し構築することができたRhシステム、Duffyシステムに関する遺伝子情報、赤血球前駆細胞の分化に伴うアイソフォームの変化、抗原の発現機構、抗原のエピトープなどに関する新知見を踏まえつつ、本研究を今後さらに発展させ、赤血球分化におけるこれら抗原分子の役割、機能などについてより明確にしていきたいと考えている。
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