研究概要 |
プラスミノゲンアクチベータ(PA)、プラスミンを介する線維素溶液反応(線溶反応)は、血栓溶解のみならず、組織修復や、癌の浸潤などにも重要な役割を果たしている。この組織線溶に関わるPAとしては、ウロキナーゼ型PAが主役であり、これが細胞に結合し、同じく細胞に結合したプラスミノゲンを細胞表面上で化学反応論的に有効に活性化することで反応が開始される。この反応の制御因子としてはPAインヒビター1(PAI-1)とα_2-プラスミンインヒビタ(α_2-P1)が考えられる。PAI-1は細胞間物質であるビトロネクチン、或いはプロテオグリカンと結合して、局所に存在し、PAを制御していることが明らかにされている。一方、細胞表面で生じたプラスミンは、血流中に存在するα_2-Plには阻害を受けにくいことが報告されている。また、α_2-Plの細胞上への特異的結合部位の存在は知られていない。我々が、α_2-Plを精製し糖鎖を解析したところ、量的には多くないが、GlcNAcにFucがα1-3結合し、非還元末端側のGalβ-4GlcNAc構造(ルイスX構造)を含んだ三本鎖複合型構造の存在が示唆された。本年度はα_2-Plが本当にその構造上にシアリルルイスX構造を持つ糖鎖を有するかいなかを更に何通りかの方法により詳細な解析を試み、これを確認した。またLPS, TNFなど細胞表面にセレクチンを発現させるような炎症性サイトカインにより、血管内皮細胞を刺激し、内皮細胞とα_2-Plが結合を解析したところ、刺激細胞において、α_2-Plの結合は有意に増加した。またこのα_2-Plは、プラスミン抑制活性を保持していることが確認された。現在さらにセレクチンを遺伝子工学的に特異的に発現させ、α_2-Plがセレクチンと結合する事を化学反応論的に解析中である。
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