研究概要 |
血小板産生を促進因子する、いわゆるトロンボポエチンは長年にわたる追跡にもかかわらず、最近までその存在さえ疑問視する向きがあった。ごく最近になってトロンボポエチンはc-mpl癌遺伝子のリガンドとして精製、クローン化された。この蛋白をマウスに投与すると血小板数は4倍に増加し、c-mplのノックアウトマウスでは血小板数が85%減少することが確認され、c-mplリガンドがまさにトロンボポエチンそのものであること立証された。我々はごく最近新しくクローン化されたトロンボポエチンに増殖依存性を示し、巨核球の性格を有する亜株UT-7/TPOの樹立に成功した(Blood印刷中)。UT-7/TPO細胞をトロンボポエチン非存在下で24時間培養後、新たにトロンボポエチンを添加し、経時的に細胞を採取し、蛋白を抽出。SDS-PAGEにて蛋白を分画し、ニトロセルロース膜に転写後、抗リン酸化チロシン抗体でウエスタンブロットを行った。トロンボポエチンにより新たなチロシンリン酸化された蛋白の分子量は145kDa、130kDa、120kDa、95kDa、80kDa、66kDa、56kDa、52kDa、44kDa、42kDaであった。そこで本研究ではこれらの分子の同定を試みた。本研究により、(1)145kDa蛋白=phospholipase C-γ1(論文投稿中)、(2)130kDa蛋白=JAK2チロシンキナーゼ(Blood印刷中)、(3)120kDa蛋白=GTAase activating protein(論文投稿中)、(4)66,56,46kDa蛋白=Shc(論文投稿中)、(5)44,42kDa蛋白=MAPキナーゼ(BBRC217:230,1995)、であることを明らかにしたので、ここに報告する。
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