再生不良性貧血(再不貧)から発作性夜間血色素尿症(PNH)へ移行する例がみられ、再不貧症例でPNHに特徴的なGPIアンカー型蛋白の欠損血球を認める場合がある。再不貧および骨髄異形成症候群(MDS)を対象に前駆細胞レベルでPNH表現型を示す異常がどの程度認められるのか、これらの異常はPNHと同様にPIG-A遺伝子の変異に基づくのか検討した。末梢血球、骨髄細胞および培養後に形成されたコロニー/バーストにおけるCD55、CD59等のGPIアンカー型蛋白の発現をフローサイトメトリーで解析した。陰性細胞からDNAを抽出し、PIG-A領域をPCR法で増幅後、Heteroduplex形成法で変異の有無を明らかにした。結果は、再不貧21例中10例(48%)、MDS22例中1例(5%)にGPIアンカー蛋白陰性細胞をみとめた。再不貧3例とMDS例では、末梢血球および骨髄細胞には陰性分画をまったく認めなかったが、コロニー/バーストでのみPNH型異常が観察された。再不貧と診断された1例は3年後に臨床的に溶血徴候がみとめられPNHへの移行が確認された。この症例は再不貧の時点でコロニー/バーストにおいてのみGPIアンカー型蛋白の欠損が認められたが、PNH移行時には末梢血球、骨髄細胞にも陰性分画がみとめられた。再不貧時の陰性コロニーからDNAを抽出し、PIG-A領域をPCRで増幅し、Heteroduplex法にてこの遺伝子の変異を比べてみると、PNH移行後の異常顆粒球および陰性コロニーにおける変異PIG-Aと同一の異常であることが判明した。以上の結果から、再不貧からPNHへの病態移行は、異常前駆細胞が比較的長期にわたって骨髄中に潜在し、ある時点からなんらかの機序により増殖、分化が速まり、その結果、異常クローンの比率が増大することに依ってPNHとしての臨床像を完成させていく過程が推定された。
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