発作性夜間血色素尿症(PNH)は、補体制御因子であるCD55、CD59などのGPIアンカー蛋白の欠損による溶血性疾患である。その病態は蛋白側の問題ではなく、それを細胞膜につなぎとめるアンカーの生合成障害であることが判明し、更に、それに関連する遺伝子が同定されている。PNHのすべての症例にこのPIG‐Aと命名された遺伝子変異が認められている。以前から、GPIアンカー蛋白陽性の前駆細胞から陰性のPNH表現型を示す血球が作られることを確認しているが、今回はPNH前駆細胞から成熟血球に至る分化過程で、GPIアンカー蛋白発現とPIG‐A遺伝子変異との関係を検討した。患者骨髄細胞を分画して、CD59陽性および陰性細胞を培養後、形成されたCFU‐GMコロニーおよびBFU‐Eバーストを個々に取り出し、細胞表面解析と遺伝子解析を平行して行った。その結果、4群のカテゴリーに属するコロニー/バーストが存在していた。つまり、(1)CD59陽性でPIG‐A正常、(2)CD59陽性でPIG‐A異常、(3)CD59陰性でPIG‐A正常、(4)CD59陰性でPIG‐A異常、の各群である。この中で(1)は正常クローンであり(4)はPNHクローンと考えられる。(3)は別の領域の変異がみつかる可能性があるが、(2)はこれまでの考え方に矛盾する。可能性のひとつとしてPIG‐Aとは別のGPIアンカー合成系が想像されるが今後の課題である。結論としてGPIアンカー蛋白の発現とPIG‐A遺伝子変異とは必ずしも一致しないことが示された。 再生不良性貧血からPNHへの移行例が最近、注目されている。前駆細胞レベルでPNH表現型を示す再不貧およびMDS症例がどの程度認められるのか検討した。再不貧21例中10例(48%)、MDS22例中1例(5%)にGPIアンカー蛋白陰性のコロニー/バーストが認められた。
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