研究概要 |
熱ショック蛋白質(heat shock protein,HSPs)は、ストレス下で細胞内に短時間に合成誘導され、系統発生の過程でよく保存されており、細胞防御・機能維持に必須であると考えられている.HSPsの抗体作製は、それらの構造上の特徴から困難であるが、我々は主要なHSPsを哺乳動物から精製し、特異抗体の作製に成功してきた。これらを使用し、平成7年度は虚血モデルで障害を受けた細胞および再生細胞でHSPsの強い誘導を確認し、また、ヒト急速進行性腎障害症例で細胞性半月体に強い発現を認めることを報告した。今年度は,急性腎不全モデルであるgentamicin(GM)腎症におけるHSP73の局在変化を免疫電顕で詳細に検討した。また、HSP60に関し、正常ラット腎における局在と脱水による変化を検討した。 1.GMをラットに投与し、HSPsの局在変化を光顕レベルで観察し、近位尿細管の障害されたライソゾームに蓄積すると推測し報告した。今回、免疫電顕でもこれらの推測を確認した。HSPsは傷害されたライソゾームの保護と修復機構に関与すると考えられる。 2.SDラットを用い、3日間断水し脱水モデルを作製した。経時的に腎を摘出し、皮質、髄質、乳頭部に分割し、それぞれHSP60の生化学的・免疫組織学的検討を行った。TBS可溶性画分では3日後乳頭部にコントロールの約2倍誘導され、TBS不溶性画分では3日後皮質にコントロールの約2倍誘導された。分布は正常ラット腎の近位尿細管から集合管にかけてミトコンドリアおよび細胞質に認められ、ヘンレループと集合管管腔側により強く発現し、HSP73やHSP90の局在と異なっていた。脱水により管腔側にさらに強い集積がみられた。これらより、HSP60は水の再吸収に何らかの役割を演じていると考えられる。
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