【各種腎疾患患者の血中HGF濃度の測定】 これまでに血液透析を必要とする慢性腎不全患者において血中HGF濃度の測定を実施したが、さらに検討対象を(まだ血液透析を必要としない)保存期の慢性腎不全患者に拡大した。その結果、これらの患者でも血中HGF濃度は正常人に較べて上昇していることがわかった。このことは、血液透析患者での血中HGF濃度の上昇が血液透析という治療手段をうけることによる結果ではなく、腎不全そのものによるものであることを示唆するとともに、HGFが初期の慢性腎不全患者の病態に関与している可能性を示すものである。 【慢性腎不全動物実験モデルでのHGF遺伝子の導入】 慢性腎不全モデルとしてラット5/6腎摘モデルとコレステロール腎塞栓モデルを作成した。後者は我々が初めて開発した腎不全モデルであり、再現性よく腎不全状態をおこすことが可能である。昨年度に我々のグループが作成したHGF発現アデノウイルスベクターをこれらの動物および正常動物に投与した。腎動脈から腎に投与する方法、腎組織に直接注入する方法、および静脈から全身性に投与する方法が試みられた。HGFの発現は特異的抗体による免疫組織化学的方法によった。残念ながら、これらいずれの方法によっても、はっきりとしたHGF遺伝子の発現は現在のところ実験動物において確認できない。今後投与量、投与時間、発現確認の時期などのさらなる検討を実施中である。
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