研究概要 |
腎臓に優位に発現する新たなCICクロライドチャネルのクローニングを目的に、ラット腎の単離糸球体を用いてPCRクローニングを行い、腎臓と大腸に強い発現を示す新たなクロライドチャネル遺伝子を単離し、非翻訳部を含む全核酸配列を決定し、CIC-5と呼称した。CIC-5は、746個のアミノ酸からなる蛋白で、ノーザンブロッティング法で腎臓と大腸に優位な発現を認め、膜貫通様式を疎水性解析した結果、従来報告されているCICクロライドチャネルと共通のトポロジーを示し、CICクロライドチャネルファミリーのニューメンバーと考えられた。また、phyrogenic tree解析でCIC-5はCIC-3およびCIC-4とのみ約80%の相同性を示しCICクロライドチャネルファミリーの中でひとつのsubfamilyを形成することが示唆された。さらに、最近報告された遺伝子性腎疾患、Dent's病の原因遺伝子と考えられるヒトCICN5cDNA配列と強い相同性(〜99%)を示した。このことは、今回クローニングしたCIC-5がDent's病の原因遺伝子のラットにおける同一遺伝子と考えられる。CIC-5の機能解析はCIC-5の安定遺伝子導入を培養細胞系で確立して行った。CIC-5cDNAをDexamesazone(DEX)エンハンサーを含む発現ベクター(pMAM-neo)へ挿入し、核内マイクロインジェクション法を用いてCHO細胞へ遺伝子形質導入した。次に、DEXによりCIC-5 mRNAの過剰発現を示す培養細胞をクロン-化しCell lineを樹立した。この安定遺伝子導入細胞を用いて行ったパッチクランプ法でWhole-cell電流を解析した結果、CIC-5はCIC-3と同様な外向きに整流性を示すクロライド選択性のチャネル(ORCC)であることが明らかとなった。従って、CICクロライドチャネルファミリーの中のORCCのサブファミリーが存在することが明らかとなった。腎臓内における詳細な発現の局在についてはCIC-5に特異的なプローベとポリクロナール抗体を作成し遺伝子(in situハイブリダイゼーション)とタンパク質発現(組織染色、Westemブロッティング法)の両面から検討中である。 1996年2月Lloyd等によりCIC-5の遺伝子異常がDent's病のみならず家族性に腎結石症を示す二つの遺伝性疾患で報告された(Nature379:445-449,1996)。クロライドチャネル異常がどのように腎結石形成に関わるかについては不明であるが、病態の解明にCIC-5の分子構造と機能に関する解析が重要な位置を占めることとなった。
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