C1Cクロライドチャネルファミリーに属する新たなクロライドチャネル遺伝子をPCRクローニング法を用いてラット腎臓cDNAライブラリーからクローニングし、非翻訳部を含む全核酸配列を決定し、C1C-5と呼称した。C1C-5は、746個のアミノ酸からなる蛋白で、ノーザンブロッティング法で腎臓と大腸に優位な発現を示すことが確認された。膜貫通様式の疎水性解析では、従来報告されているC1Cクロライドチャネルと共通のトポロジーを示し、C1Cクロライドチャネルファミリーのニューメンバーと考えられた。また、phyrogenic tree解析でC1C-5はC1C-3およびC1C-4と約80%と高い相同性を示したことからC1Cクロライドチャネルファミリーの中でひとつのsubfamilyを形成することが示唆された。C1C-5の機能については、C1C-5の安定遺伝子導入を培養細胞系で確立して、パッチクランプ法で解析し、C1C-5がC1C-3と同様に外向きに整流性を示すクロライド選択性のチャネル(ORCC)であることをまず明らかにするとともに、単一チャネルレベルでの解析を行っている。一方、臨床的にはラットの腎臓から単離されたこの遺伝子がヒトにおいて三つの遺伝性腎疾患(Dent病、X染色体連鎖劣性腎臓結石、X染色体連鎖劣性低リン酸血症性くる病)の原因遺伝子と考えられているC1CN5と同一遺伝子であることが明らかとなった。そこで、Dent病と類似の病態を示す、特発性低分子タンパク尿症の3症例についてゲノムDNAを解析したところ3つの異なるC1CN5遺伝子の変異を明らかにした。C1C-5クロライドチャネル異常がこれらの疾患の病態にどのように関わるかについては不明であるが、C1C-5の分子構造と機能に関する解析が病態の解明に重要な位置を占めることとなった。
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