AQP-CDと他の類似チャネル、大腸菌のグリセロール輸送体GlpF、水晶体の非特異的輸送体MIP等との遺伝子組換えキメラ体を合成し、アフリカツメガエル卵に発現させ、その機能を調べた結果、第3番目と第4番目の親水性ループが水透過孔を形成していると考えられた。さらに、点変異を用いて検討したところ、水透過孔の狭小部は、細胞外は第3番目の親水性ループ内のアスパラギン123番、細胞内では第4番目の親水性ループ内のアスパラギンサン155番付近と考えられた。一方、カルボキシル端を欠損した変異体は、タンパクとして合成はされるものの、細胞質内にとどまり、卵細胞膜上には発現されないことが明らかとなった。 これらの研究結果から、研究代表者らは新たな水チャネルの構造モデルを提唱している。すなわち、6つのαヘリックス構造の膜貫通部が孔を形成し、その両端に第3、第4番目の親水性ループが内腔へ入り込む形で、水分子を選択的に透過させる狭窄部を構成するとするものである。 水透過孔の局在部位については、当初の計画通りほぼ決定することができたと考えられる。組み替え体の合成と遺伝子配列の確認、アフリカツメガエル卵への発現、浸透圧水透過性の測定において、技術的な問題はなく、安定した結果が得られた。一方、水透過孔の立体構造に関しては、まだ十分な解明はされていない。類似水チャネルとの比較検討、水透過孔付近の点変異体を作成してさらに詳細な検討が必要と考えられる。 さらに、一部の変異体に認められたような、タンパクは合成されても細胞膜表面に発現されない現象は、タンパクの立体構造と細胞内輸送との関連を推測させるものである。この点については、培養細胞発現系を用いた今後の検討が必要と考えられた。
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