研究概要 |
酢酸ウラニウム(UA)による急性腎不全の回復期にUAを再び投与すると、二回目のUA投与後の急性腎不全の程度は軽減される。このモデルで急性腎不全の程度が軽減される理由に関連して、(1)UAによる細胞障害からの回復が強く起こるか、(2)アポトーシスの程度の差が関係するか、を検討した。 雄SDラットにUA(5mg/Kg)を静脈内に投与し急性腎不全を惹起した。UA投与により、5日目をピークとする血清クレアチニン値(Scr)の上昇、及び尿細管壊死と円柱形成を認めた。Scrがほぼ正常に回復した14日目に同量のUAを再度投与した。2回のUA投与後1,3,5,7,14日目のラットについて採血と腎摘出を行った。1回目のUA投与後に比し2回目のUA投与後のScr上昇、尿細管細胞障害、の程度は有意に軽度であった。1回目UA投与後にBrdUの取り込みでみた細胞増殖や、TUNEL陽性細胞数でみたアポトーシスは5日目をピークとして増加した。2回目UA投与後のBrdU陽性細胞数、TUNEL陽性細胞数は1回目の投与後に比し、有意に少なかった。 以上の結果から次のことが示唆される。(1)UAによる急性腎不全からの回復期のラットは、UA再投与に対して抵抗性を獲得し、腎機能低下の程度、尿細管細胞障害の程度は有意に軽減される。(2)UA再投与時に見られる急性腎不全に対する抵抗性の獲得は、アポトーシスの減少を介する障害の軽減による可能性がある。一方、(3)抵抗性獲得の機序に回復促進が関与している可能性は少ない。
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