アルポート症候群においては、IV型コラーゲンの異常が腎炎の原因になっていることは今日ではほぼ決定的で、現在、本症候群の病因、病態を総合的に理解するべき状況にある。これまでアルポート症候群における遺伝子の異常は報告されているが、全15エクソンの遺伝子解析はされていない。アルポート症候群の遺伝子異常は特定のエクソンに集積しておらず、本症の病因、病態の解明には全エクソンの遺伝子解析を行なう必要があるが、これまでは一部のエクソンの解析しか行われていない。 本研究の目的は(1)IV型コラーゲンα5鎖遺伝子の全エクソンの遺伝子解析を行い、(2)アルポート症候群におけるα5鎖遺伝子の異常と臨床病理所見との関係を明らかにすることである。 これまでに腎生検、皮膚生検組織の免疫病理学的検索によりIV型コラーゲンα5鎖蛋白の異常を認めた伴性遺伝型アルポート症候群患児を対象に、患児のIV型コラーゲンα5鎖遺伝子の全51エクソンをRT-PCR法により増幅し、MDEゲル法により遺伝子異常の有無を検討してきた。 そして、末梢血白血球よりRNAを抽出し、IV型コラーゲンα5鎖遺伝子をRT-PCR法により増幅することに成功し、免疫組織学的にIV型コラーゲンα5鎖蛋白の発現に異常を認めた伴性遺伝型アルポート症候群の1家系で、これまでに報告されていない新しい遺伝子異常を発見した。
|