本年度は、ラットの片側の尿管閉塞モデルでは腎間質に線維化が出現することを確認した。この間質の線維化過程を明らかにする目的で、尿管結紮後経時的に腎組織を採取し、PCNAによる増殖細胞、オステオポンチン、α smooth muscle actin (α SMA)の発現、間質型コラーゲンの組織染色を検討した。尿管結紮後3日目にはPCNA陽性の尿細管上皮細胞が著しく増加し、光顕所見でも尿細管上皮細胞に核分裂像が多数観察された。7日目にはPCNA陽性細胞数はやや減少し、このころから集合管、遠位尿細管、一部の近位尿細管が著しく拡張し、2週目には嚢胞状に拡張してきた。以上の成績から、尿管結紮により尿細管上皮細胞の増殖が短期間で誘導されることが明らかになった。2週目の腎組織では拡大した尿細管管腔の周辺で間質幅の拡大、間質の細胞浸潤、線維化が光学顕微鏡レベルで観察された。間質の細胞浸潤の推移を検討した結果、マクロファージを主体とするED-1陽性細胞が3日目から間質に認められるようになり、7日目、14日目にさらに増強した。しかし、ED-1陽性細胞は腎間質のdendric cellも陽性に染色されている。尿細管細胞が産生する炎症細胞の走化因子としてはMCP-1やRANTESなど多数の因子が知られているが、今回はオステオポンチンの発現を検討した。controlでは、オステオポンチンは遠位尿細管領域に発現が認められるが、結紮後短期間に髄質外層から近位尿細管上皮細胞まで上皮細胞胞体にびまん性に発現が認められた。さらに3日目にはED-1陽性細胞が間質に認められるようになり、7日目、14日目にさらに増強した。
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