昨年度は、ラットに片側の尿管閉塞(UUO)モデルを作成し、腎間質病変の経時的変化を検討した。その結果、尿管結紮後短期間に尿細管上皮細胞の増殖が誘導され、尿細管上皮細胞にosteopontin(OPN)やα smooth muscle actin(α SMA)の発現が誘導された。その後、マクロファージを主体とする間質の細胞浸潤が出現し、次第に間質の線維化が形成されることが明らかになった。本年度はこの動物モデルを用い、副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬(mizoribin:MZ)の腎間質病変への影響を組織学的に検討した。UUOモデル作成直後から、間質の細胞浸潤や線維化が明らかになる7日目まで、各薬物を連日皮下投与した。投与量はステロイド薬はmethylpredinisolone 30mg/Kg/day、MZは5mg/Kg/dayで、コントロールには生理食塩水のみを皮下投与した。間質量の増加をpointing count法で検討すると、コントロールでは時間経過とともに腎皮質・髄質とも間質量が著しく増加した。ステロイド薬投与群では皮質での間質量増加が軽度抑制されるに過ぎないが、MZ投与群では腎皮質・髄質とも間質量の増加が著明に抑制された。ED-1陽性のマクロファージの浸潤やα SMA陽性細胞を検討すると、ステロイド薬投与群では間質病変の抑制は観察されなかったが、MZ投与群では明らかに細胞浸潤が抑制され、α SMA陽性細胞数も減少していた。この様に、副腎皮質ステロイド薬はこのモデルに認められる間質病変に対しては、抑制効果が乏しいことが明らかになった。なお、MZ投与群ではコントロールにくらべて近位尿細管上皮細胞のOPN発現に差は認められなかった。
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