1.年齢69歳以下、罹病期間5年以上のインスリン非依存性糖尿病患者142名より血液を採取し、そのbuffy coatよりDNA抽出を行った。患者は糖尿病性腎症stageにより(1)正常アルブミン尿群41名(平均年齢55歳)、(2)微量アルブミン尿群47名(平均57歳)、(3)持続性蛋白尿群54歳(平均56歳)の3群に分けた。 2.個々の患者のアンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子の挿入(I)/欠損(D)多型をRigatらの方法(Nucleic Acids Res1992)により同定した。 3.各群におけるACE遺伝子のgenotype(DD、ID、II)の頻度は、(1)正常アルブミン尿群では各々10、46、44%で、(2)微量アルブミン尿群では13、53、34%、(3)持続性蛋白尿群では15、46、39%であった。χ^2検定を行った結果各群間に有意な差は認められなかった(p=0.85)。 4.今回の予備的検討では、ACE遺伝子多型と糖尿病性腎症のstageとの間に有意な関連がない可能性が示唆された。 5.今後の予定として、(1)対象患者数をさらに増やし統計的により信頼性のある結論を得るようにする。(2)正常アルブミン尿群と微量アルブミン尿群患者を対象に前向き検討を行い、ACE遺伝子多型の腎症進展速度への関与を検討する。(3)得られたDNA検体を用いβ3-交感神経受容体遺伝子など他の候補遺伝子についても解析を加える。
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