研究概要 |
in vitroの実験において、ヒトエリスロポエチンを組み込んだ組み換えアデノウィルス(AdCMVEPO)(5×10^7pfu)を、トランスウェルという2層式の培養皿上に増殖させたラット中皮細胞4/4RM-4(各1×10^6)に感染させ、24時間後、産生させたヒトエリスロポエチンの分泌極性を上層と下層に分泌されたヒトエリスオポエチンを各々ラジオイムノアッセイで測定することにより評価した結果、上層へは6,196.7+/-830.8mU/ml、下層へは4,483.3+/-485.8mU/mlと有為差を認め、中皮細胞4/4RM-4において遺伝子導入により発現させたヒトエリスロポエチンの分泌には極性のあることが示唆された。 in vivoの実験で、腎性貧血をおこすモデルマウスDBA/2FG-pcy(22-24週齢,ヘマトクリット20-25%)にAdCMVEPO(1×10^8pfu/個体)を腹腔内投与し投与10、21、28、40日目の血中ヒトEPO値、網状赤血球数、ヘマトクリットを測定して、腎性貧血の改善を検討した。AdCMVEPO投与前の血中ヒトEPO値は29.4+/-5.4mU/mlであったが、投与後40日間の平均血中ヒトEPO値は2559mU/mlで、投与1日目に14730+/-930mU/mlの最大値を示し、40日目に至っても100mU/mlの高値が持続した。網状赤血球数は、AdCMVEPO投与前は1.5+/0.2%であったが、投与後21日目に20%と最大になり以後漸減した。ヘマトクリットは、AdCMVEPO投与後28日目に最大の42.6+/-4%に達し、この値は40日目になっても持続していた。以上よりアデノウィルスベクターを用いた生体内遺伝子としては長期にわたる導入遺伝子の発現を認め、且つ、適切な腎性貧血の改善を得た。
|