研究課題/領域番号 |
07671264
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
酒井 紀 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40056560)
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研究分担者 |
白澤 卓二 東京都老人総合研究所, 研究員 (80226323)
高橋 孝宗 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手
宇都宮 保典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70231181)
川村 哲也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20161367)
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キーワード | Jak3 / チロシンキナーゼ / 共通γ鎖 / IL-4 / 糸球体腎炎 / IgA腎症 / 糸球体上皮 / クレアチニン |
研究概要 |
Jak3は、Jakチロシンキナーゼのメンバーでサイトカインのシグナル伝達で重要な役割を果たしている。Jak3はIL-2受容体γ鎖(共通γ鎖)と会合し、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9およびIL-15のシグナル伝達に必須のチロシンキナーゼ分子である。我々はこれまでに、Jak3キナーゼを腎メサンギウムより単離し(FEBS Lett 1994;342(2):124-128.)、Jak3が糸球体で構成的に発現していることを明らかにしてきた(Biochem. Biophys. Res. Commun 1995;209:218-226.)。本研究では、糸球体におけるJak3の生理学的、病理学的役割を明らかにする目的で、Jak3抗体を作成し、腎癌健常部および糸球体腎炎患者の生検試料中の糸球体におけるJak3の局在に関して免疫組織学的な検討を加えた。糸球体腎炎61症例および健常腎4例におけるJak3の局在を検討した結果、Jak3はIgA腎症(34例中14症例)および巣状糸球体硬化症(5例中1症例)の糸球体上皮に選択的な局在を認めたが、微小変化群(6症例)、膜性腎症(7症例)、半月体形成性腎炎(4症例)、ループス腎炎(5症例)および腎健常部糸球体(4症例)では局在を認めなかった。Jak3陽性IgA腎症群はJak3陰性IgA腎症群に比べ有意にクレアチニン・クリアランスが減少し(Jak3陽性群:81.5±10.4ml/min、Jak3陰性群:104.3±29.6ml/min、P<0.05、Student's t-test)、血清クレアチニンが上昇していた(Jak3陽性群::1.13±0.33mg/dl、Jak3陰性群:0.75±0.23mg/dl、P<0.01、Student's t-test)。さらに腎糸球体上皮におけるJak3および共通γ鎖の発現をin vitroおよびin vivoで確認した。以上の結果より、共通γ鎖-Jak3を介したシグナル伝達系がIgA腎症の糸球体上皮障害に関与することを示唆した。また、IgA腎症でIL-4分泌T細胞が糸球体に浸潤していることから糸球体上皮におけるIL-4に対するシグナル応答が増強し、IgA腎症の進行に関与する可能性について考察した。
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