研究概要 |
ACE遺伝子多型と腎血行動態の変化を健常者とNIDDM患者で検討しACE遺伝子多型が糖尿病性腎症発症に関係するメカニズムを検討した。29例の健常者と8例のNIDDM患者を対象としcaptopril renogramを施行した。 ACE遺伝子多型により血漿ACE値と同様に腎ACE活性も異なるのではないかと考えられた。そこでcaptoprilによる腎血行動態の変化がACE遺伝子多型により異なるか否かを調べた。 健常者ではcaptopril投与後の平均血圧(MAP)の低下はDD型(-2.8±7.1%,P<0.05),ID型(-8.1±5.5%,p<0.05),II型(-9.1±7.2%,p<0.05)でありII型で最とも高度であつた。ERPFの有意な増加はID型(16.5±5.8%,p<0.01)およびII型(21.0±14.4%,p<0.01)のみに認められDD型(1.5±10.8%)では認められなかつた。腎血管抵抗(RVR)の有意な低下はID型(-20.0±5.3%,p<0.02)およびII型(-23.2±9.6%,p<0.05)のみに認められDD型(-7.2±9.4%)では認められなかつた。 NIDDM患者ではcaptpopril投与後にMAP,ERPF,RVRのいずれも有意な変化を示さずばらつきが大きくcaptpotril投与後renogramの悪化する症例も存在した。Captoprilによる腎血行動態の変化がACE遺伝子多型により異なるという結果が得られた。このことからACE遺伝子多型により腎ACE活性が異なる可能性は高くこれが糖尿病性腎症発症頻度の差と関係しているのではないか考えられた。
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