1.腎炎ラット糸球体におけるテネイシンの発現の解析 WKY系ラットに坑GBM抗体を投与して作成した半月体性腎炎実験モデルにおけるテネイシンの発現の時間経過を詳細に検討した。同モデルにおいては抗体投与後3-4日までに蛋白尿が出現し、その腎機能も低下して腎不全に陥る。組織学的には、3日目には細胞性半月体が既に観察され、4週目には間質の変化も顕著となる。抗体投与後3日目には糸球体周囲のテネイシンの発現が亢進するとともに、半月体内にもテネイシンが観察された。4週目には間質にもテネイシンの発現が強く観察されるようになった。間質のテネイシンはその後も強い発現が続いたが、半月体のテネイシンは8週目以降次第に減少した。3-7日目のテネイシンmRNAは主にボ-マン嚢上皮細胞内に認められ、糸球体周囲及び半月体のテネイシンは同細胞により産生されることが示唆された。 2.invitroにおけるテネイシンmRNAの発現 培養糸球体細胞によるテネイシンの産生を蛋白質及びmRNAのレベルで検討した。坑テネイシン抗体を用いた抗体染色により、単離糸球体を培養してoutgrowthしてくる細胞にテネイシンの発現が観察された。また培養糸球体由来の上皮細胞(バーマン嚢上皮細胞あるいは足細胞)及び培養メサンギウム細胞のmRNAを調製し、ノーザンブロット法を行ったところ、両細胞においてテネイシンmRNAの発現が観察された。これらの結果から、糸球体固有の細胞が、テネイシン産生能を有することがわかった。
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