異常胚の奇形患部の染色体分析 a)発症NOD(non obese diadetic)マウスについて 発症NODマウス(NOD-DM)のvaginal plug確認の日を妊娠0日とした妊娠12日目の胚のうち異常胚として外脳症や脊髄閉鎖不全が観察された。異常胚の奇形患部と正常部位の染色体標本は、air-dry法により作製された。染色体分析の結果、奇形患部において数的異常11.3%、構造異常4.0%、正常部位においては各々4.5%、1.9%の異常が観察され、奇形患部において有意に高い染色体異常率が確認された(P<0.05)。 b)薬剤誘発糖尿病マウスについて ストレプトゾトシン(STZ)200mg/kgを腹腔内投与した糖尿病妊娠マウスからの妊娠12日目の異常胚として、外脳症や脊髄閉鎖不全が観察された。異常胚の奇形患部は数的異常23.3%、構造異常3.3%、正常部位は各々0%、1.7%であり、奇形患部が有意に高い染色体異常率を示した(P<0.05)。 以上NOD-DMおよびSTZ誘発糖尿病マウスの結果は、奇形患部に染色体異常の高い発生率を示しており、細胞の接着や代謝の異常などと共に、染色体異常も奇形発生に関与しているのではないかと考えられる。またNOD-DMの奇形胚の正常部位は、STZ誘発糖尿病マウスよりも高い異常率(4.5%、1.9%、P<0.05)を示しているが、これはNODマウスが自己免疫疾患を併せもっているためのより複雑な環境によるものと考えられる。 2)Blastocyst cultureによる研究 培養はLibbus & Hsu(1980)の方法を用いた。培養液はCMRL1066(シグマ製)を用い300mg/dlの糖および16mMの2-HYdroxybutyrate(ケトン体)を添加した。ICRマウスからのblastocystは2日間培養された。培養成績は着床の有無、萎縮の有無により評価し、対照の無添加、糖添加、糖およびケトン体添加各々88.6%、88.0%、90.4%であり有意な差はなかった。染色体異常を持つ胚は対照26.6%に対して、糖添加50.0%、糖およびケトン体添加82.4%と各々有意に高い発生率を示した(P<0.01)。各々高率を示しているのは培養の影響や高濃度の添加等が考えられるが、染色体異常の起因の一つとして糖およびケトン体が影響しているのではないかと考えられる。
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