1。胚培養。細胞培養による染色体分析(追加実験) 胚培養による研究は例数をふやす目的、細胞培養についてはデータにバラツキがあり、追加実験をした。 1)胚培養による染色体分析 実験は前報告と同じ方法で行った。対照の無添加で培養した卵においては、染色体の数的異常17.9%、構造異常2.6%であるのに対し、糖添加の結果においては各々25.0%、5.6%、さらに糖とケトン体をともに添加した結果においては、26.6%、5.3%であった。今回の結果においては、対照の無添加でも20.5%と高い染色体異常の発生率が確認され、培養の影響が強く示唆された。 2)糖尿病環境での細胞培養による研究 前回の報告と同じ実験系で行われた。まず構造異常は、対照との間に有意の差がみとられ、前報告と同様の結果が得られた。糖とケトン体をともに添加した場合においては、数的異常のうち、異数性の発生率に有意の差が認められ、これも前報告と同様であった。しかしpolyploidyの発生率は対照も、糖およびケトン体添加の場合も高く、培養の影響が強く示唆された。特に胚が培養の影響を受けやすい傾向が観察されたので、マウス成獣の細胞を培養したものと、胚の培養された細胞を比較検討した。その結果胚からの培養細胞において、polyploidyが13.6%と成獣のそれ(0%)より発生率が高く、胚の細胞は培養の影響を受けやすいことが確認された。 2。組織学的検索 妊娠12日目の外脳症胚と正常胚の神経管を光顕的に比較検討した。まずICR、NOD-DM、ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスについて、各々同じ中脳部位の細胞分裂状態をしらべたが、外脳症胚と正常胚の間に有意の差はなかった。組織学的検索結果でも、細胞の分化脳や極性などに大きな差はみられず、染色体異常によっておこるであろう組織の大きな異常は認められなかった。胚においては異常な細胞は処理され、正常な細胞に正常な本来の発生をするような正常化の力があるのではないかともおもわれる。
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