1。 胚培養。細胞培養による染色体分析 糖尿病環境にするために300mg/dlグルコースおよび32mMケトン体を添加して培養した。 1) 初期胚培養による染色体分析:糖単独添加、糖とケトン体添加ともに染色体異常の高い発生率を示した。対照の無添加でも20.5%と高い発生率が確認され、培養の影響が示唆された。 2) 糖尿病環境での細胞培養による研究:妊娠12日目の胚の細胞を培養した。構造異常は、糖単独添加および糖とケトン体添加ともに、対照との間に有意の差が認められた。また数的異常のうち異数性の発生率も糖とケトン体添加の場合に高い傾向がみられ、糖とケトン体の影響が示唆された。しかしpolyploidyの発生率は対照の無添加においても高く、培養の影響が示唆された。 3) 胚盤胞培養による染色体分析:構造異常には有意の差はなかったが、数的異常のうち異数性は糖単独添加も糖とケトン体添加も対照に比べ有意に高かく糖やケトン体の影響が示唆された。 2。 奇形部位の染色体分析 異常胚の正常部に比較して患部に異常頻度が高かったが、患部特異的な異常はみられなかった。 3。 組織学的検索 妊娠12日目の外脳症胚と正常胚の神経管を光顕的に比較検討した。間脳部位の細胞分裂状態をしらべたが、外脳症胚と正常胚の間に有意の差はなかった。組織学的検索結果でも、細胞の分化能や極性などに大きな差はみとめられず、染色体異常によっておこるであろう組織の大きな異常は認められなかった。胚においては異常な細胞は処理され、正常な細胞に正常な本来の発生をするような正常化の力があるのではないかともおもわれる。
|