生後10日目の新生仔ラットを麻酔し、右頸動脈を永久決紮し、さらにナイロン糸を逆行性に上行大動脈に挿入した。その上、左の内頸・外頸動脈分岐部を脳外科手術用クリップではさんで脳虚血を作製した。本研究では2時間後にクリップをはずして回復させる「2時間虚血モデル」を用いた。平成7年度は、2時間虚血終了24時間後にラットを屠殺し、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色で一般病理学的変化を検討するとともに、アポトーシスの存在を検討するために、TUNEL法による染色を行なった。すなわち、6μmの切片を脱パラフィン後、proteinase Kによる前処置を行ない、terminal deoxytransferaseとビオチン化dUTPを添加し、さらにストレプトアビジンペルオキシダーゼを反応させ、DABで発色させた。H&E染色では右半球主体に広範な虚血性変化がみられ、右前頭・頭頂部新皮質では80%以上の細胞が変化を示していた。海馬や線状体もそれぞれ約50%および80%の障害を受けていた。TUNEL法による検討では、右前頭および頭頂部の第3、5層において虚血性変化を示した大部分の細胞がTUNEL陽性であった。また線状体でも全神経細胞のうち50%以上がTUNEL陽性であった。またTUNEL陽性細胞は主に核が濃染した。多くの陽性細胞はH&E染色では、核が凝集したようにみえたが、一部核が小さく断片化をきたしたようにみえるものもあった。したがって、もしTUNEL陽性細胞がアポトーシス細胞を標識するものであるとするなら、従来、未熟脳において単に虚血性障害といわれていた細胞変化の大部分がアポトーシスに基づくものであることが判明した。
|