研究概要 |
肺サーファクタントは脂質蛋白質複合体であり,肺胞II型細胞の粗面小胞体で合成され,ラメラ封入体へ輸送・蓄積されると考えられている。ラメラ封入体のサーファクタントは,種々の分泌刺激に応じて肺細胞腔に分泌されて,気液界面において表面張力を低下させる。サーファクタントの主要リン脂質のホスファチジルコリンは,粗面小胞体で合成後,ゴルジ装置を経由せずラメラ封入体に輸送される。また主要サーファクタント蛋白質のSP-Aは,粗面小胞体で合成後,ゴルジ装置に輸送され,一旦分泌された後に再度取り込まれ,ラメラ封入体に集積する。サーファクタント成分の細胞内輸送には未解明の部分も多いが,脂質結合蛋白質や低分子量G蛋白質がその機構に関与していると考えられる。低分子量G蛋白質に属するrab蛋白質は,細胞内小器官と小胞に分布しており,細胞内輸送の調節に関与していると考えられている。肺胞II型細胞においてrab蛋白質を同定しその分布を明らかにすることができれば,サーファクタント輸送機構の解明につながる。平成8年度は,平成7年度に引き続き,rab蛋白質cDNAのスクリーニングおよびクローニング方法の検討を行った。平成7年度の結果をふまえて,スクリーニングはPCR法で行った。rab蛋白質には4か所のアミノ酸のコンセンサス配列部分があるが,このうちの2か所の配列を選択し,コンピューター解析を行ってセンスおよびアンチセンスの2本のdegenerateプライマーを設計作製した。次にこのプライマーを用いてPCRの反応条件を検討した。PCR産物の陽性コントロールとして,すでにクローニングされた肺胞II型細胞rab蛋白質cDNAを鋳型にして用いた。その結果PCRの感度には温度の設定が強い影響を及ぼすことがわかり,またホットスタート法によってPCRを行うことによってPCR産物を効率よく,しかも特異的に増幅できることが明らかになった。
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