研究概要 |
肺胞II型細胞内外での肺サーファクタントの輸送及び代謝機構の解析を行った。 肺胞II型細胞における肺サーファクタントの輸送機構について,rab蛋白質(低分子量GTP結合蛋白質の一種)cDNAのクローニングを試みた。平成9年度は,平成7〜8年度に検討された設定条件に基づいて,PCR法によってラット肺cDNAライブラリーからrab蛋白質cDNAのスクリーニングを行った。この間,PCRの反応条件をさらに検討して,肺胞II型細胞rab蛋白質(smg24)のコンセンサス配列をコードする塩基配列をプライマーとして採用することによって,安定したPCR産物を得ることが可能になった。しかし,1次〜3次スクリーニングでは,陽性プレートを同定できるものの,最終的なクローニングの段階で,陽性クローンを確認することができず,現在のスクリーニング方法をさらに改良する必要があることが明らかになった。 一方,肺胞II型細胞から分泌された後の肺サーファクタントの輸送代謝機構について,サーファクタント・サブタイプ転換の面から,以下の検討を行った。肺胞II型細胞において合成された表面活性の高いlarge aggregate surfactantには,ラメラ封入体や管状ミエリンが含まれ、表面活性を発現した後に,活性の低いsmall aggregate surfactantに転換される。平成8年度は,このサーファクタント・サブタイプ転換を評価するために,in vitro surface area cycling法を確立した。平成9年度は,この手法を用いて,胎便によるサーファクタント・サブタイプの転換促進を証明し,胎便吸引症候群におけるサーファクタント代謝機構の障害の可能性を明らかにした。さらに,慢性肺疾患の呼吸障害の発症に関与する顆粒球エラスターゼの肺サーファクタント代謝への影響について解析を行った。その結果,顆粒球エラスターゼによって、サーファクタント・サブタイプの転換が促進されること,サーファクタント蛋白質が減成することが示された。
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