1.wnt-1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを添加した培養液中で、ラット初期胚を全胚培養した。Wnt-1タンパクのアミノ酸247から252に対する部分の18merを用いた。 結果:wnt-1対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(0.001μM)は、ラット胚卵黄嚢の血管形成を阻害した。胚は小さく、大動脈、卵黄動脈に血球が滞留し、囲心腔は拡張していた。脳胞形成等は正常で、β-カテニン、2H3染色のパターンは対照胚と同様であった。 2.抗Wnt-1ペプチド抗体を添加した培養液中で、ラット初期胚を全胚培養した。作成した抗Wnt-1ペプチド抗体の中の、ラット胚組織中の82kDaの物質のみを認識する抗体を用いた。 結果:低濃度の抗体(1μg/ml)処理で、アンチセンスオリゴヌクレオチド処理と同様の結果が得られた。 3.抗b-FGF抗体、および、抗FGF-5抗体を添加した培養液中で、ラット初期胚を全胚培養した。抗b-FGF抗体と抗FGF-5抗体は市販のものを用いた。 結果:両方の抗体とも、1μg/mlあるいは10μg/mlの濃度においても胚発生は正常で、卵黄嚢の血管形成阻害は見られなかった。 以上の結果から、Wnt-1はラット卵黄嚢の血管形成に機能していることが示唆される。Wnt-1はFGFとは異なった機構で血管新生に関わっているのであろう.wnt-1はマウス乳ガンから単離された。ガンには血管新生が付随している。Wnt-1のシグナルは、細胞接着、細胞質突起形成、管形成に関わり、血管形成にも関わっていると思われる。
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