Wnt-1タンパクのアミノ酸241まら256にたいするペプチドを抗原に、抗Wnt-1ウサギポリクローナル抗体を作成した。作成した抗体を幼いて、ラット胚組織、および、全胚の免疫染色を行った。中脳の外套層、神経褶細胞に染色が見られ、wnt-lmRNAの存在する細胞で産成されたWnt-1タンパクが、外套層方向に移動することが考えられた。 2.上記抗体を培養液に添加し、ラット全胚培養を行った。抗体処理(35-50μg/ml)で、脳を含む中枢神経系神経関の腹側域が、発育不全、あるいは、変形を示した。添加した抗体は、変形部域に取り込まれていた。低濃度(1μg/ml)の抗体処理では、卵黄嚢の血管形成が阻害された。処理胚は小さかったが、脳神経のパターン等は正常であった。 wnt-1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを培養液に添加し、ラット全胚培養を行った。低濃度抵抗処理と同様の結果が得られた。 抗b-FGF抗体、および、抗FGF-5抗体を培養液に添加し、ラット全胚培養を行った。両抗体処理とも胚発生は正常で、卵黄嚢の血管形成阻害は見られなかった。 以上の結果から、Wnt-1は、神経管腹側域の細胞増殖、細胞形態の維持、および、卵黄嚢の血管形成に機能していることが示唆される。Wnt-1はFGFとは異なった機構で血管新生に関わっているのであろう。wnt-1はマウス乳ガンから単離された。ガンには血管新生が付随している。Wnt-1のシグナルは、細胞増殖に加え、細胞接着、細胞質突起形成、管形成に関わり、中枢神経系の形態形成とともに血管形成にも役割を果たしていると思われる。
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