研究概要 |
[研究目的]Ras蛋白は細胞の増殖、分化、癌化に関与していることが知られており、特に膵癌では80%以上にcodon12のKi-ras point mutationが存在していることからその役割が注目を浴びている。本研究ではRasの活性化に必要なfarnesyl化を阻害するfarnesyltransferaseinhibitor(manumycin)を用い、ヒト由来の膵癌細胞株でその効果を検討した。[実験方法]膵癌細胞株はK-rasのpoint mutationがあるAsPC-1,MIA PaCa-2,SUIT-2およびmutationのないBxPC-3を用いた。proliferation assayはmanumycinを種々の濃度で作用させ72時間後に^3H-thymidine uptakeおよびAlamar Blue assayを行った。manumycinを72時間作用させた細胞よりDNAを抽出しアガロース電気泳動を行った。次に10,30,100μMの濃度で2時間作用させた細胞をBALB/c-nuに1×10^6皮下注し、腫瘍形成率および増殖率を検討した。[結果]manumycinは細胞株に関わらず濃度依存性に細胞増殖を抑制し、IC50はAsPC-1,MIA PaCa-2,SUIT-2,BxPC-3それぞれ6.4,5.0,7.5μMでありK-rasのpoint mutationの有無と抑制率には明らかな関係はなかった。 アガロース電気泳動ではラダー像が得られ、apoptosisが誘導されていることが判明した。 皮下移植後19日目の腫瘍形成率はcontrol,10,30,100μM群でそれぞれ100,90,20,0%で30,100μM著明に抑制された。control群と10μM群の腫瘍増殖曲線には差はなかった。[今後の展開浸潤能、肝転移能に与える影響などについて検討を加えていく予定である。
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