研究概要 |
新たな膵癌治療法を開発する目的でFarnesyltransferase inhibitorであるManumycinの効果をヒト膵癌細胞株(SUIT-2,AsPC-1,MIA PaCa-2,BxPC-3)を用いて検討した。^3H-Thymidine uptakeによる検討では、K-ras codon12のpoint mutationの有無に関わらず濃度依存性に増殖は抑制されたが、50%抑制濃度は変異型細胞株に比べ野生型のBxPC-3が高かった。増殖刺激後のMAPKは変異型のSUIT-2の方が、BxPC-3より抑制された。また浸潤能もSUIT-2では10μMで抑制されたが、BxPC-3は同濃度では抑制されず30μMで抑制された。Manumycinによるapoptosisの誘導を検討すると、48時間培養でSUIT-2では100μMの高濃度でDNA ladderが検出されたが、これ以下の濃度およびBxPC-3では検出されなかった。さらにManumycinで処理したSUIT-2を1×10^6個ヌードマウスに移植したところ、皮下腫瘍、肝転移ともに濃度依存性に抑制された。以上より、ManumycinはRasのfarnesyl化を阻害することによりMAPKカスケードを介した細胞内シグナル伝達を抑制し、増殖能および浸潤能を抑制することが明らかとなった。またこれらの作用は変異型Rasを持つ細胞により強く現れる可能性が示唆された。これより、farnesyl化阻害剤は90%以上変異Rasを有する膵癌の新たな治療薬として有望と考えられた。
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