昨年度までに、エレクトレット化および非エレクトレット化ゴアテックスシートを用いて、犬の下大静脈に植え込み実験を行った。本年度は、腎動脈分枝部以下の腹大動脈にも植え込み実験を行い検討した。グラフトの開存を指標にした長期間存率では差を認めなかった。また、グラフト中央部の内皮が未だ進展して来ていない部分を重点的に観察したが、エレクトレット化および非エレクトレット化ゴアテックスシート間に明らかな差は認められなかった。エレクトレット化および非エレクトレット化ゴアテックスシートを、ヘパリン化血液、およびEDTAを加えた血液中に浸し、赤血球を中心としたparticle付着の程度を検討した。この場合には、エレクトレット化ゴアテックスシートは非エレクトレット化シートより、有意に付着数は少なかった。植え込み実験で差が出ないことは昨年も問題としたが、内皮の進展してこない十分の距離をもったグラフト、つまり管腔構造のエレクトレット化ゴアテックスの作製が必要と考えられた。
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