研究概要 |
臓器移植患者に生じるclonal anergyの機序についてヒト腎移植患者および腎提供者の末梢血液を用いて検討した。in vitroのリンパ球混合培養、細胞障害性試験およびダブルチャンバー抑制試験においてドナー特異的抑制細胞が存在するレシピエントではドナー特異的抑制細胞がドナー抗原刺激によってのみ非特異的な抑制性液性因子を産生放出し、IL-2産生を抑制するがIL-3,IL-10産生の抑制は認められなかった。 一方、ドナー特異的抑制細胞の認められないレシピエントにおいても、ドナー抗原刺激によるIL-2の産生が低下していた。これもリンパ球内のIL-2mRNA発現が低下していることが認められた。ドナー抗原刺激によるリンパ球内のIL-3,IL-10産生の低下は認められず、ドナー抗原刺激に対するIL-2の産生がmRNAレベルでIL-2特異的に低下していることを認めた。以上の結果は移植臓器長期生着移植患者においては抑制細胞の有無にかかわらずドナー抗原刺激に対してmRNAレベルでIL-2の産生が特異的におこらないことによって生じることを明らかにした。 ラットにおける生着機序の免疫学的解析のために、PVGラットにLEWラットの肝臓をFK504投与下に移植したトレラントラットを作製した。このラットにヒトIL-2、2500JRUを皮下投与したが拒絶は生じなかった。今後、肝に選択的にIL-2発現が生じる実験系で更に検討する予定である。
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