研究概要 |
ゼラチンを基質としたzymographyは、正常大動脈の標本では弱い72kDと64kDのゼラチン分解活性を示した。閉塞性動脈硬化症の標本では強い92kDのゼラチン分解活性と、弱い72kDのゼラチン分解活性および強い64kDのゼラチン分解活性を示した。動脈硬化性動脈瘤の標本では非常に強い92kDのゼラチン分解活性と、弱い72kDおよび64kDのゼラチン分解活性を示した。これらのゼラチン分解活性はEDTAおよび1,10-phenanthrolineで完全に抑制され、matrix metalloproteinaseと判断された。カゼインを基質としたzymographyは、正常大動脈の標本と閉塞性動脈硬化症の標本では弱い72kDのカゼイン分解活性を示した。動脈硬化性動脈瘤の標本では強い72kDのカゼイン分解活性と強い52kDのカゼイン分解活性を示した。72kDのカゼイン分解活性はPMSFで完全に抑制され、serine proteinaseと判断された。52kDのカゼイン分解活性はPMSFで抑制されず、EDTAおよび1,10-phenanthrolineで完全に抑制され、matrix metalloprogteinaseと判断された。 MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9、TIMP-1、TIMP-2に対する抗ヒトモノクローナル抗体を使用したWestern blottingでは、MMP-2およびMMP-9はzymographyと同様の結果であった。MMP-1、MMP-3、TIMP-2は検出されなかった。TIMP-1は閉塞性動脈硬化症の標本で弱く検出されたが、動脈硬化性動脈瘤の標本では強いTIMP-1が検出された。 以上の結果より、正常大動脈では潜在型72kDIV型コラゲナーゼが分泌され、閉塞性動脈硬化症では潜在型72kDIV型コラゲナーゼの活性化と92kDIV型コラゲナーゼおよびTIMP-1の弱い分泌が認められ、動脈硬化性動脈瘤では92kDIV型コラゲナーゼとTIMP-1が強く分泌されることが明らかとなった。
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