【移植モデル】近交系ラット(ドナーはBN、レシピエントにはLEW)を用いて心移植を行った。【可容抗原の生成】ドナーの単離肝細胞を3MKCl液中で撹拌して細胞質成分を溶出させた後その上清を採取した。この抽出液中には組織適合性抗原(クラスIおよびII)が可溶化したペプチドとして含まれている。この可溶抗原を適当な濃度に調節してラットに投与した。【移植トレランスモデルの作成】BN→LEWの無処置心移植群ではグラフトの平均生着期間は7.2±0.8日であった。可溶抗原をレシピエントの胸腺に投与し、同時に抗T細胞レセプターモノクローナル抗体(R73)を静注した。抗原投与後14日目に心を移植すると、胸腺投与群(it群)では100%が永久に生着、すなわち移植トレランスが誘導された。これらの移植トレランス誘導の機序をさらに調べるべく、以下の実験を行った。1)2nd allograft challenge:it群の長期生着ラット(移植後120日以上)にあらたなBNの心を移植すると、全例が永久に生着した(n=5)。2)adoptive transfer assay:it群の長期生着ラットの血清2mlまたはT細胞(1x10^8個)を新たなLEWレシピエントに投与し、BNの心を移植してその生着期間をみたところ、血清移入群では生着期間は移植心の生着期間はコントロール群と変わらなかったのに対し、T細胞移入群では生着が10.0±1.0日(n=5)と、有意(P<0.01)に延長した。
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