研究概要 |
1.ヒトキラーT細胞へのIL-2遺伝子の導入 平成7年度の研究より得られたPA317とψ2の高力価ウイルス産生Packaging細胞クローンを用いて,ping-pong反応を行い,viral titerを上昇させて遺伝子を導入した.この際,標的細胞へのレトウイルスベクターの感染は従来から用いられている上清による感染ではなく,独自に開発したdouble chamberを用いた.この方法は下層にping-pong反応させたPackaging細胞を,上層に導入標的細胞であるキラーT細胞を培養することにより持続感染させることで,さらなる感染効率の向上を目的とするものであり,実際,この方法により,遺伝子導入が困難とされていたヒトキラーT細胞に対しても高い導入効率でIL-2遺伝子を導入出来ることを確認した.また,今回遺伝子導入を行ったIL-2cDNAは全長のもの(650bp)とAT配列に富む3′-非翻訳部分を除いたもの(480bp)の計2種類を用いた. IL-2遺伝子導入キラーT細胞の分子生物学的検討 IL-2遺伝子導入腫瘍浸潤リンパ球(TIL),細胞障害性リンパ球(CTL)からgenomic DNAを抽出し,遺伝子導入したIL-2遺伝子がgenomic DNAにintegrationされているかをSouthern blotting法により確認した.また,ping-pong反応において危惧される目的遺伝子の塩基配列の欠失も認められなかった.サイトカイン遺伝子の3′-非翻訳部分は,その存在によりmRNAがRNaseに障害され,半減期が短縮されると報告されているが,IL-2 cDNAの3′-非翻訳部分を除いたものを導入したキラーT細胞のIL-2 mRNAの発現をNorthern blotting法で検討すると,mRNAの半減期が延長していることが確認できた.
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