研究概要 |
筋肉が神経再支配を受けるまでの待機期間に,別の神経による早期からの神経支配を与えることによって脱神経萎縮を予防することができる(babysitter効果)かどうかの検討を続けた。 Wistar系ラットの左下肢で脛骨神経から分岐して腓腹筋外側に分布する神経枝を剥離し,これを可及的に中枢まで分離して切断,その断端間に腓腹神経(長さ約1cm)を移植して縫合した.同時に腓骨神経を剥離露出し,切断後その中枢断端を腓腹筋外側頭に埋入固定した.右下肢は対照として腓骨神経の埋入操作のみを除いて同じ操作を行なった.2ヶ月後,左下肢を開創し,埋入した腓骨神経を切断,再び閉創した.3ヶ月後,腓腹筋の湿性重量,筋線維の直径,等尺性収縮力を測定したが、腓腹筋の平均湿性重量比(対照側を100%として)は103%,平均筋線維直径比(左/右)は101%,平均等尺度性収縮力比(左/右)は98%と,いずれも有意の差を認めなかった.しかし、6ヶ月後の評価では平均湿性重量比112%、平均筋線維直径比105%、平均等尺性収縮力110%と、軽度ながらbabysitter効果を認めた。すなわち、神経移植群では消失したbabysitter効果は、埋入した神経を途中で切断するという新たな操作を追加することにより、やや弱いながら再び認められるようになった。これらの結果より、一時的に他の神経を筋肉内に埋入させ、脱神経性萎縮を防止することはある程度は可能であるということが示唆された。
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