研究概要 |
現在、遺伝子治療は、増殖性ウイルスベクターを用いて外来遺伝子をex vivoで導入し、患者に戻すやり方が主力である。しかし、これらの方法はウィルスベクターの病原性に問題があり一部の代謝性疾患をのぞき十分な効果を発揮するにいたっていない。これまで我々はin vivoで外来遺伝子を導入する方法として遺伝子銃を検討してきた。本法は器材の検討より始めており現在代謝異常モデルを研究中である。これまでの結果をまとめ、本器材の応用の展望を報告する。 【実験方法】Wistarラットを使用して、開腹下に肝実質にin vivoで外来遺伝子を射入した。導入遺伝子は種々の大きさのgold particleにCMV β-galactosidoseをコートしたものを用いた。種々の条件下でこれまで4種類(火薬式(GENEBLASTER 1221)及びヘリウム式(IDERA GIE-III,ハンマー弾式,Hand-held式)の遺伝子銃を検討した。 【実験結果】遺伝子銃の基本的性格から射入圧を上昇させることで高率に遺伝子導入可能と考えられたが、実質臓器損傷が強まった。ex vivoでは種々の遺伝子銃で遺伝子導入が可能であった。Hnad-held type (Helios Gene Gun,Bio Rad Lab)のものは、in vivoで射入しやすく、しかもノズル中心部にきわめて高い(周辺比で100〜10,000倍)遺伝子発現を得ることができた。本器では200-300psiでの射入圧で良好結果を得た(第3回日本遺伝子治療学会発表予定)。【考察】本法は、導入遺伝子が射入部のみにとどまることから代謝性疾患にはstem cellへのex vivoでの導入か、肝等の実質組織に数次回射入が必要であることが判明した。一方、遺伝子導入により産出される物質がきわめて毒性が高くても(たとえばTNFやアンチセンスなど)、局所にとどまることができるため、固形癌治療にも大変有力と考えられた。さらに種々の遺伝子をミックスして導入できる可能性も高く、新しい遺伝子療法として今後も検討が期待される。
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