研究概要 |
我々は増殖性ウィルスベクターを使用せずにin vivoで外来遺伝子を簡便に導入する方法として遺伝子銃を検討したきた。これまでに4種の器材を検討し、その特性を明らかにした。これらの結果をまとめ、本器材の応用の展望を報告する。 【実験方法】Wistarラットを使用して、開腹下に肝実質にin vivoで外来遺伝子を射入した。導入遺伝子は種々の大きさのgold particleにCMV β-galactosidoseをコートしたものを用いた。種々の条件下で4種類(火薬式(GENEBLASTER 1221)及びヘリウム式(IDERA GIE-III,ハンマー弾式,Hand-held式)))の遺伝子銃を用いて、β-galactosidase活性を測定した。さらにCMVA-18(UDP-glucurosyl transferase)を本遺伝子の欠損ラットであるGunnラットに射入し、血清ビリルビンの推移を観察した。 【実験結果】遺伝子銃の基本的性格から射入圧を上昇させることで高率に遺伝子導入可能と考えられたが、実質臓器損傷が強まった。ex vivoでは種々の遺伝子銃で遺伝子導入が可能であった。Hand-held type(Helios Gene Gun,Bio Rad Lab)のものは、in vivoで射入しやすく、しかもノズル中心部にきわめて高い(周辺比で100〜10,000倍)遺伝子発現を得ることができた。しかし、Gunnラットに対するA-18遺伝子導入は、数次射入(9〜10回)を行ったが、高ビリルビン血症を改善するに至らなかった。【考察】本法は、導入遺伝子が射入部のみにとどまることから代謝性疾患にはstem cellへ一旦ex vivoで導入し、その細胞をもどす方法が良いと考えられた。一方、導入遺伝子が局所にとどまるため、遺伝子導入により産生される物質がきわめて毒性が高くても(たとえばTNFやアンチセンスなど)使用可能と考えられた。この際には種々の遺伝子をミックスして導入できる可能性も高く、固形癌に対する新しい遺伝子療法として期待される。
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