研究概要 |
(1)ヒト乳癌細胞株MDA-MB231をヌードマウスのmammary padに移植。自然腋窩リンパ節への自然転移をおこす細胞株をFidler等の方法に準じて樹立している。現在第4世代に入り、親細胞より増殖速度が早く、リンパ節転移度の高い細胞株が得られつつある。倒立顕微鏡下の観察では形態学的に親細胞は紡錘形であるのに対し、分離株は上皮様で明らかに異なっており骨転移能を検討中である。 (2)MDA-MB231を56日齢の雌ヌードラットの胸部大動脈内に接種することにより実験骨転移を作成した。接種後4週目にレントゲン撮影を行って骨転移を検索すると明らかな骨融解像をみとめ、組織学的にも骨転移が証明された。現在、ホルモン感受性株T47D、原発乳癌より分離された乳癌株BT474についてもこのモデルの適応を検討している。 (3)ヒト乳癌骨転移材料を用いた増殖特性の研究は、現在増殖因子、受容体蛋白の発現を免疫組織学的に検討している。ER, EGFR, c-erbB-2, TGFα, c-met (HGFR)についての、現在22例の剖検例について検討した。その結果、ER陽性率は原発腫瘍において52%であり、c-erbB-2, TGFαの発現率は骨転移細胞においてそれぞれ、48%, 68%で原発腫瘍と転移腫瘍で一致していたが特異的とは考えられなかった。一方、c-metの発現は原発腫瘍において78%、骨転移細胞において86%と共に高率であったが、一致率は61%であり、乳癌細胞の骨(骨髄)内での増殖に関与している可能性も考えられ、現在遺伝子レベルでの検討を行っている。EGFRの発現はみとめられなかった。
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