腫瘍のメサイオニン依存性に着目した新しい代謝括抗物質の開発

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07671329
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 久保田 哲郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00118944)
• キーワード: メサイオニン / 依存性 / 培養細胞 / 新鮮手術材料 / G2ブロック

研究概要

(1)培養細胞株を対象としたメサイオニン依存性の検討
当施設において継代培養を行っている腫瘍細胞株23株、正常線維芽細胞株3株を対象として、各腫瘍のメサイオニン依存性をgrowth assayにより検討した。基準培養液として、メサイオニンを含まないROMI-1640+透析FCS+増殖因子を用い、これにメサイオニン10^<-4>M (MET^+HCY^-)またはホモシステイン10^<-4>M (MET^-HCY^+)を加えた培養液を作製し、(MET^+HCY^-)では増殖可能であるが、(MET^-HCY^+)では増殖が抑制される株をメサイオニン依存性株とした。
検討した各種培養細胞株26株(正常線維芽細胞株3株、腫瘍細胞株23株のうち、正常線維芽細胞株はすべてメサイオニン非依存性であったのに対して、腫瘍細胞株のうち60% (14/23)がメサイオニン依存性であり、その依存性は腫瘍細胞の種類によらず広く分布していた。
(2)新鮮手術材料を対象としたメサイオニン依存性の検討
当教室における新鮮手術材料を対象として、上記の方法と同様な培養液による初代組織培養を行った。培養終了時には、(MET^-HCY^+)群と、(MET^+HCY^-)群のDNAを染色して吸光度をイメージアナライザーにより測定し、DNAパターンによりメサイオニン欠乏によるG2ブロックの程度を算出した。
大腸癌1/6、膵癌1/4、肺癌1/3、婦人科癌1/3にメサイオニン依存性が認められた。この他、乳癌、悪性黒色腫、前立腺癌にも依存性が確認され、全体の依存性は33% (8/24)であった。以上の成績より、メサイオニン依存性は癌の種類によらず広く分布している一方、正常細胞における依存性は低いことが確認され、メサイオニンを標的とした治療法は今後有用と考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Kubota,T., et al.: "Growth regulation by estradiol. progesterone and recombinant human EGF of human breast carcinoma xenografts" Anticancer Research. 15. 1275-1278 (1995)
• [文献書誌] Kubota,T., et al.: "Potential of the histoculture drug-response assay to contribute to cancer patient survival" Clinical Cancer Research. 1. 1537-1543 (1995)
• [文献書誌] Furukawa, T., Kubota,T.: "Clinical application of the histoculture drug response assay" Clinical Cancer Research. 1. 305-311 (1995)
• [文献書誌] Tanino, H. Kubota,T., et al.: "In vivo antitumor activity of hexamethylmelamine agansist human breast, stomach and colon carcinoma xenografts" Japanese Journal of Cancer Research. 86. 770-775 (1995)
• [文献書誌] Kuo, T., Kubota,T.,: "Liver colonization competence governs colon cancer metastasis." Pro. Natl. Acad. Sci.92. 12085-12089 (1995)
• [文献書誌] Kase, S., Kubota,T.,: "Dual modulation by l-leucovorin and recombinant human IFN alpha 2a of 5-FU antitumor activity againsr human colon carcinoma" J. Interferon and Cytokine Research. 15. 1089-1093 (1995)