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本研究では、早期の抗血栓性は人工血管壁からのヘパリン除放によるが、自己の組織に含まれるまた自己の組織から放出されるサイトカインの血管新生作用により植え込み後2週間で自己の内膜被覆が完成し、抗血栓性に優れ、遠隔期に内膜被覆のこない静脈用代用血管を開発することを目的にし、研究を開始した。本年度はまず、植え込み直後から人工血管が全長にわたって内皮細胞により被覆されるまでのbFGFと血管新生との関係に焦点を絞って基礎実験を行った。人工血管の設計として材料の選択では、静脈、皮下脂肪、大網等を基礎構築として用いた布製人工血管壁に圧力注入して採取した動物の皮下結合組織内および腹部大動脈に植え込み実験を行って、皮下への植え込み実験では血管新生と治癒過程、大血管への植え込み実験では開存、抗血栓性、血管新生、内皮細胞の進展状況、内皮細胞での被覆、代用血管内腔面に形成された血栓の器質化を観察した。その結果、静脈を材料とすると供給が限られている、皮下脂肪では材料の採取は問題ないが、質が一定とは限らない、大網では血管新生作用が著しく内皮細胞として表面を覆うより血管腫を形成してしまうことが観察された。また静脈系における代用血管の開存の必要条件を求めるために雑種成犬における下大静脈における植え込み実験を行った。実験の手技的な問題があり、遮断時間、縫合等まだ改善の余地はある。現在、縫合部の血栓形成が大きな問題である。抗ウシbFGF抗体を用いた免疫組織染色法の確立に力を入れた。大血管では皮下結合組織片を播種した代用血管は良好な成績を示している。しかし血流速度が遅く、血栓形成が速やかな静脈系での植え込まれた人工血管の開存に関してはこれからの抗血栓性賦与方法の成功にかかっていると言える。
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