研究概要 |
「目的」我々の使用している各種モノクローナル抗体(A2B5,PKK-1,4F2,HISL-19)の中でモノクローナル抗体HISL-19は、各種内分泌腫瘍に特異的に反応し腫瘍マーカーとして有用性があること、また良性内分泌腫瘍に比して悪性内分泌腫瘍で反応性が強いことを平成7年度の研究で報告した。平成8年度は、更にこれらの症例を重ねこの事実を裏付けるとともに、この抗原の細胞質内における抗原蛋白の局在部位が両者に相違があるのかを免疫電顕法を応用し超微形態学的に検討する。 「材料と方法」光顕的組織化学材料として内分泌および非内分泌腫瘍のformalin固定、paraffin包埋標本で染色法は蛍光抗体法またはSAB法を用いた。電顕的組織化学材料は、手術時得られた甲状腺髄様癌で、オスミウム酸前固定、グルタール固定標本で組織化学的手技は、pre-embedding法を用いた。 「結果」光顕的組織化学研究の結果は、平成7年度の結果とほぼ同様であった。電顕的組織化学法によるHISL-19抗原の局在検索の結果は、甲状腺髄様癌のsecretary granule内に陽性所見として認められた。 「考察」我々の使用しているモノクローナル抗体の中でHISL-19はformalin固定,paraffin切片標本に応用できる特徴があり、内分泌腫瘍の腫瘍マーカーとして有用性が高い。また、悪性内分泌腫瘍に強陽性となりこれらの腫瘍でHISL-19陽性の新しい蛋白抗原の出現する事が(Western blotting法による生化学的検索結果を裏付けとして)判明した。今回の免疫電顕結果より、この抗原は多数、分泌顆粒内に認められ悪性腫瘍における蛋白合成の活性化が確認された。良性内分泌腫瘍とのHISL-19抗原の超微形態学的な局在部位の比較をするまでには時間的に至らなかったが、ここまでの結果をまとめ論文として欧文誌に投稿予定である。
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